次のワクワクする予定、もう決まってますか? どうもSINK夫婦です。
今回のブログは、インドの言語事情についてです。
インドで暮らし始めて感じたのは、「言語がとにかく多い」という当たり前のようで実感が伴う驚きでした。公用語が複数あることは知識として知っていても、実際に紙幣を眺めたり、街で人と話したりするたびに、その多様さを肌で感じます。今回は、暮らしの中で気づいたインドの言語事情をまとめてみます。
正直なところ、暮らし始めたばかりの頃は、街で見聞きする言葉の違いがまったく分からず、「インドの言語は全部ヒンディー語なのだろう」と思い込んでいました。実際に暮らしてみると、その思い込みがいかに大きな勘違いだったかを実感することになります。
インドの公用語はいくつある?「22」という数字の実態
インドの憲法には、第8附則という部分で22の指定言語が定められています。連邦政府レベルの公用語はヒンディー語と英語の2つですが、それとは別に、各州がそれぞれ独自の州公用語を定める仕組みになっています。
私たちが暮らすカルナタカ州の公用語はカンナダ語です。隣の州に行けばまったく違う言語が公用語になっていることも珍しくなく、「1つの国の中に、まるで複数の国が同居している」ような感覚を覚えます。
子どもの頃は何語で学校に通う?家庭では何語?
インドの学校教育では、母語や住んでいる州の言語・ヒンディー語・英語という3言語を学ぶ「三言語政策」が基本になっています。近年は都市部を中心に、幼少期から全科目を英語で教える「英語ミディアム校」に通う子どもも増えており、特にIT関連の大都市ではその傾向が強いといわれています。
家庭内の言語も家庭によって様々です。両親の出身州が異なる夫婦の場合、共通言語が英語しかないというケースもあるようです。実際に、街なかで親子が英語で会話している場面を見かけることもあり、「家庭内の言語」も一律ではないのだと感じます。
紙幣の裏に並ぶ言語の数に驚いた
インドで暮らし始めてすぐに驚いたのが、ルピー紙幣のデザインです。表面には英語とヒンディー語で金額が書かれているのですが、裏返すと、細かい文字がずらりと並ぶ一角があります。
調べてみると、裏面にはさらに15の言語で額面が記載されており、表面と合わせると合計17言語が1枚の紙幣に収まっている計算になります。何気なく使っているお金の中に、これだけの言語的多様性への配慮が詰め込まれていると思うと、あらためて興味深く感じました。
実はこの「17」という数字、憲法が定める「22の指定言語」とはそのままイコールではありません。何気ない紙幣にも、数字のズレという小さな謎がありました。
「22」と「17」、数字が合わない理由
紙幣の17言語のうち、英語は指定言語には含まれていません。逆に22の指定言語のうち6言語(ボド語・ドーグリー語・マイティリー語・マニプリー語・サンタル語・シンド語)は、紙幣には印刷されていません。明確な基準は公表されていませんが、話者数が比較的多い言語が中心に選ばれているようです。
看板の60%はカンナダ語、条例で定められたルールだった
「バンガロールのお店の看板には必ずカンナダ語が書かれている」という気づきは、実は条例に基づいたルールでした。たとえば「NIKE」のような英語表記の横に、カンナダ文字で音訳した「ನೈಕ್(ナイキ)」のような表記が並んでいるのを見かけます。
カルナタカ州では、商業施設の看板の60%以上をカンナダ語で表示することが法律で義務付けられており、カンナダ語を看板の上半分に配置することも定められています。バンガロール市内では、このルールの運用をベンガルール市公社(BBMP)が担っています。看板ひとつからも、この地域が言語をどれだけ大切にしているかがうかがえます。
実際は何言語あるのか、数字は資料によってバラバラ
「結局インドには何言語あるの?」という疑問について調べてみると、資料によって数字が大きく異なることが分かりました。
言語データベースのエスノローグでは、現存する言語として400前後を挙げている一方、方言や母語の単位まで含めると1,600以上という資料もあります。数え方(独立した言語として数えるか、方言として数えるか)によって振れ幅が非常に大きく、統一された正確な数字を出すのは難しいようです。それ自体が、インドの言語的な多様さを物語っているように感じます。
初対面はまず現地語、通じなければ英語に切り替える
日常の中で意識しているのが、初めて会う人にはまず現地語であいさつしてみるということです。反応を見て、通じていなさそうであれば、自然に英語へ切り替えます。
インドでは相手の出身州によって話す言語が異なるため、こちらの現地語のあいさつが必ずしも通じるとは限りません。そのぶん、英語が共通の橋渡し役になっている場面を日常的によく感じます。
インド人でも「わからない」と言われた、南北の言語の壁
以前、電話口で知らない言語を話され、近くにいたインド人に代わってもらったことがあります。すると、「これはカンナダ語だから、自分にも分からない」と言われました。その人は北インド出身とのことでした。
さらに話を聞くと、街中の看板に書かれた文字を見ても、何と書いてあるのか見当もつかないそうです。同じインドの中の言語なのに、と最初は少し違和感がありましたが、北と南では使われている文字の系統自体が違うため、推測すること自体が難しいとのことでした。
日本人であれば、たとえば中国語の看板を見ても、漢字から何となく意味を推測できることがあります。ですが彼曰く、そうした手がかりになる感覚すらないそうです。同じ国の中でも言語の壁がこれほどはっきりしていることに、あらためて驚かされた出来事でした。
「話せる」と「読み書きできる」は別の話
インドで暮らしていて感じるのが、「話せること」と「読み書きできること」は必ずしもイコールではない、という感覚です。特に南インドでは、1人が4つ以上の言語を日常的に話せることも珍しくないとされています。ただ、話せる言語のすべてを読み書きできるとは限らず、「話せるけれど読み書きはできない言語がある」という状態も普通にあるようです。
日本では、話せる言語であればほぼ読み書きもできるという感覚が一般的だと思います。ですが、インドではその前提が必ずしも成り立ちません。インド全体の識字率は**約77%(2023年時点)**とされ、州によっても差が大きく、最も高いケララ州で約93%、最も低いビハール州で約62%程度といわれています。「話す・聞く」と「読む・書く」を切り離して考える感覚は、日本人にはあまり馴染みがないものだと感じます。
数字の単位もインドの言語由来だった
インドで頻繁に見かける「ラック(lakh)」「クロール(crore)」という数字の単位も、もとをたどるとサンスクリット語やヒンディー語に由来しています。クロールはサンスクリット語で「頂点」を意味した言葉が、いつしか「1000万」という具体的な数を表すようになったといわれています。
桁の区切り方も独特で、最初の3桁だけを区切ったあとは2桁ごとにカンマが入るため(例:1,00,000で10万)、日本や欧米で見慣れた3桁区切りとはズレが生じます。以前、資料の数字を見て桁を間違えているのではと思い、訂正をお願いしたことがありました。しかし実際はルールそのものが違っていただけで、こちらの区切り方でないと混乱するという人もいれば、私たちのように3桁区切りでないと混乱するという人もいる、という話でした。
まとめ
公用語だけで22言語、紙幣には17言語、そして数え方によっては1,600を超えるとも言われる言語の数。インドで暮らしてみると、こうした多様さが特別なことではなく、日常のあちこちに自然に溶け込んでいることに気づかされます。
そのうえで、英語が世代や地域を越えた共通言語として機能している場面を数多く目にするのも、暮らしてみて実感したことのひとつです。
よくある質問
A. 憲法の第8附則で22の言語が指定言語として定められています。ただし、連邦政府レベルの公用語はヒンディー語と英語の2つです。
A. 表面の英語・ヒンディー語に加え、裏面に15の言語が記載されており、合計17言語になります。
A. 都市部や日常のさまざまな場面で広く使われていますが、地域や相手によっては現地語が必要になる場面もあります。


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