次のワクワクする予定、もう決まってますか? どうもSINK夫婦です。
今回のブログは、インドで実際に暮らしていて感じた「ベジかノンベジか、お酒を飲むかどうかは聞いてみないとわからない」という気づきと、気になって調べてみたその背景についてです。
見た目や雰囲気だけでは判断できない
日本でも、食事に誘うときは好き嫌いやアレルギーの有無を確認するのが普通です。これは当たり前の気遣いとして、特に意識せず行っていました。ただ、インドで必要になる確認は、少し違う視点のものでした。ベジかノンベジか、お酒を飲むかどうかは、好みやアレルギーとはまた別に、宗教や信仰が関わってきます。実際に聞いてみるまで、全く分からないというのが正直な実感です。
グループでご飯に行くときは要注意
特に気をつけているのが、複数人でご飯に行くときの注文です。ノンベジ料理を頼むと、ベジの人はその料理を食べられません。一方で、ベジ料理であれば、ノンベジの人も含めて誰でも食べられます。
そのため、グループで食事に行くときは、注文前に必ず一人ひとり確認します。「ベジですか?ノンベジですか?」と、シンプルに聞くだけです。これを怠ると、特定の人だけ食べられる料理がない、という状況になりかねません。
特に2〜3人程度の少人数で、自分以外がベジの場合は、こちらもベジ料理に合わせるようにしています。
お酒についても同じことが言えます
私たちの周りでは、お酒を飲まない方も多くいらっしゃいます。話を聞くと、信仰上の理由を挙げる方もいました。もちろんこれは個人の考え方や背景によるものです。一律に決めつけないよう気をつけています。
その代わり、私一人だけが飲んでも、相手は全く気にする様子がありません。この辺りは、日本ほど強い同調性がないからなのかもしれない、と個人的には感じています。
曜日によってベジ・ノンベジが変わる人も
さらにややこしいのが、曜日によってルールが変わる人がいることです。「火曜日と木曜日はノンベジ、それ以外の日はベジ」というように、曜日単位で使い分けている人もいました。
「特殊なルールの人だ」ということは覚えていても、具体的に何曜日がノンベジなのかまでは、正直覚えていません。単純に「ベジかノンベジか」の二択で覚えておけばいいわけではありません。実際にはかなり細かい基準が、人によって存在するのだと実感しました。
「なぜこんなに人によって違うのか」気になって調べてみました
毎回「ベジですか?」「お酒は飲まれますか?」と確認するうちに、そもそもなぜこれほど差があるのか気になり少し調べてみました。すると、かなり奥が深かったので、詳しめに紹介してみます。
同じヒンドゥー教なのに、なぜこんなに差があるのか
調べていて一番驚いたのが、「同じヒンドゥー教」を名乗る人の間でも、食のルールがかなり違うという点でした。理由をたどると、いくつかの背景が重なっているようです。
まず、ヒンドゥー教にはキリスト教やイスラム教のような開祖や、唯一の聖典が存在しないとされています。長い年月をかけて、地域ごとの神話や哲学、慣習が合流してできた宗教だと説明されることが多いようです。そのため、「ヒンドゥー教共通のルールブック」のようなものが、元々ないのだと分かりました。
そのうえで、ヒンドゥー教には「カースト(ジャーティ)」という出身集団の区分があります。伝統的に、上位のカーストほど肉食やお酒を避ける傾向が強いとされています。カーストは数千種類あるとされ、同じヒンドゥー教でも所属する集団によって、元々の食のルールが異なるようです。
カースト・地域・家系による違い
しかも、この序列は完全に固定されたものではないようです。「一族そろって肉食やお酒をやめることで、より浄性の高い家系だとみなされようとする」という動きが、歴史的にあったという説明も見かけました。つまり、同じ出自でも、家系ごとの選択によって差が生まれてきたと考えられています。
地域による伝統の違いも大きいようです。例えば、ベンガル地方のバラモンは魚を食べます。一方、カシミール地方のバラモンは根菜を避けるそうです。
また、曜日ごとにベジ・ノンベジを使い分けるような習慣は、宗教全体のルールというより、個人的な信仰実践であることが多いようです。その人や家庭がどの神様を信仰しているかに紐づいています。例えば、火曜日はハヌマーン神やガネーシャ神への祈りの日として、ベジや断食をする人が多いとされています。
つまり「ヒンドゥー教」はひとつの一律なルールというより、カースト・地域・家系・個人の信仰対象が幾重にも重なった結果として、これだけの個人差が生まれているようです。
そもそも菜食が浸透した背景にある「非暴力」という考え方
インドで菜食の人が多い背景には、「アヒンサー(非暴力)」という考え方が関係しているとされています。生き物を傷つけない、殺さないという思想です。ジャイナ教やヒンドゥー教に共通する価値観だそうです。もともとは特定の階層を中心に大切にされてきた考え方でした。それが時代とともに、広く浸透していったという説明もよく見かけます。
ただし、インド全体でのベジタリアンの割合は、調査によって2割程度〜4割程度までかなり幅があります。はっきりした数字を出すのは難しいようです。「インド=みんな菜食」というイメージほど、単純ではないと感じます。
ジャイナ教の「不殺生」のロジックが面白い
調べていて特に驚いたのが、ジャイナ教の食事のルールです。ジャイナ教はインドの人口のごく一部(1%未満ともいわれます)ですが、非暴力の徹底ぶりがかなり独特でした。
ジャイナ教の世界観では、生き物は持っている感覚器官の数によって分類されているそうです。植物や水は、最も原始的な「感覚器官が1つだけの生き物」とされています。人間が生きていくためには、何かの命をいただく必要があります。そのため、その中でも「最も犠牲が小さい」植物だけを食べる、というロジックになっているようです。この説明を見て、なるほどと思いました。
ジャイナ教で避けられる具体的な食材
さらに徹底している人になると、玉ねぎ・にんにく・にんじんなどの根菜類も避けるそうです。理由は、収穫の際に土の中の虫や微生物を殺してしまう可能性があるからです。同じ理由で、キノコ(菌類)も避けられます。虫がつきやすいナスやカリフラワーも、避ける人がいます。
ハチミツも避けられることがあります。採取の過程で、ハチを傷つける可能性があるためです。お酒についても、発酵の過程で微生物を使うという理由で避ける人がいるとのこと。
夜間の調理を避ける人がいるという話も印象的でした。火や明かりに誘われて飛んできた虫を、誤って調理に巻き込んでしまわないようにするためだそうです。こうした背景から、ジャイナ教徒には農業ではなく商業に従事する人が、伝統的に多いとも言われています。土を耕す農業自体が、土中の生き物を傷つける行為とみなされるためです。
ベジタリアンにも種類がある – 卵は?魚は?
「ベジタリアン」とひとことで言っても、実はいくつか種類があるようです。インドで一般的な「ベジタリアン」は、乳製品(牛乳・ヨーグルト・ギーなど)は食べる「ラクト・ベジタリアン」のタイプが標準とのこと。卵は食べないけれど、乳製品はOKという人が多いようです。卵まで食べる「オボ・ベジタリアン」もいます。
面白いのが、ベンガル地方のバラモン階級の一部です。特別な日を除いて、魚を食べることが伝統的に許されている人たちがいるという話でした。「ベジタリアン=絶対に生き物を口にしない」という単純な話ではなさそうです。地域や家系ごとの伝統によって、線引きが違うというのが実態のようです。
最近はヴィーガン(完全菜食)人口も増えているそうです。2022年には、インドの食品安全基準局(FSSAI)がヴィーガン専用のロゴを新しく導入したという話も見かけました。
地域によって割合が大きく違う
同じインドでも、地域差がかなり大きいという点も興味深かったです。ある調査では、西インドのグジャラート州やラジャスタン州は、菜食の人が多数派とされています。一方、西ベンガル州やケーララ州など、沿岸部・南部では非菜食が多いとされています。私たちが暮らすカルナタカ州(バンガロール)も、南インドに近い地域として非菜食の人が比較的多い印象です。
ちなみにインドでは、パッケージ食品に緑色(ベジ)・茶色(ノンベジ)のマークをつけることが法律で義務付けられています。これも「聞かなくても一目で分かる」ための工夫の一つなんだと知りました。
ベジ・ノンベジ以外にも、宗教ごとにルールが違う
調べてみると、ヒンドゥー教・ジャイナ教以外の宗教では、また違ったルールがあることも分かりました。イスラム教やシク教は、そもそも肉食自体を禁じているわけではないそうです。一方でイスラム教は、豚肉やお酒を明確に禁じています。パールスィー(ゾロアスター教徒)は、食に関する制限がほとんどないとのこと。
シク教の話で印象に残ったのが、アムリトサルの黄金寺院(ゴールデンテンプル)のエピソードです。500年前から続けられているという「ランガル」という習慣があります。宗教や身分に関係なく、誰でも無料で食事をふるまうという伝統だそうです。宗教ごとの「食」に対する考え方の違いを感じるエピソードでした。
お酒を飲まない人が多い理由
お酒については、ヒンドゥー教の古い法典(マヌ法典)が関係しているようです。この中で、飲酒は「五大罪」のひとつとして位置づけられてきた歴史があるという説明を、複数の情報で見かけました。インドの人口の約8割を占めるヒンドゥー教、約14%を占めるイスラム教(いずれも2011年国勢調査ベース)。どちらも、飲酒に対して伝統的にあまり寛容ではないとされています。これが社会全体として、「お酒はオープンに飲むものではない」という空気につながっているようです。
宗教だけでなく、「だらしない」「品がない」といった道徳的なイメージも背景にあるという指摘がありました。宗教と社会通念の両方が、絡み合っているのだと感じました。
法律で禁止されている州、そうでない州
法律面では、州単位で禁酒法を施行している地域もあります。グジャラート州、ビハール州、ナガランド州、ミゾラム州などです。加えて、特定の日には全国的にお酒の販売が禁止される「ドライデー」という制度もあるそうです。独立記念日やガンディー生誕日などが、その対象になります。
一方で、私たちが住むカルナタカ州は、これらの禁酒州には該当しません。レストランやお店で、普通にお酒を購入・注文できます。同じインドでも、州によってこれだけ事情が違うというのは、住んでみて初めて実感したポイントです。
最近は少しずつ変わってきているようです
都市部を中心に、飲酒経験がある人の割合は緩やかに増加しているというデータもあります。特に20代後半の世代で、高い傾向にあるようです。ウイスキー中心だった好みも、ワインやクラフトジンなど多様化してきているとのこと。
食の面でも、同じような変化を感じます。実際、水牛のお肉を使ったハンバーガーなどを見かける機会も増えてきました。「ベジが主流」というイメージだけでは、今のインドを語りきれない部分もありそうです。
「聞く」が一番確実
こうして調べてみると、ベジかノンベジか、お酒を飲むか飲まないかの背景には、想像していた以上に奥深い事情がありました。宗教や歴史、地域差など、理由は一つではないようです。それでも、家系や個人の信仰によって差が出る以上、見た目や雰囲気だけで判断するのは難しいというのが実感です。
調べていて意外だったのは、「聞くこと」自体は失礼にあたらないという点でした。むしろ、勝手に「ベジタリアンだろう」「お酒は飲まないだろう」と決めつける方が、相手の信仰や事情を軽んじることになりかねません。そのため、確認することは気遣いの一つとして受け止められているようです。
よくある質問
A. いいえ、そうとは限りません。地域や個人差が大きく、肉や魚を食べるヒンドゥー教徒も多くいます。割合も調査によって幅があります。
A. 全国一律で禁止されているわけではありません。グジャラート州やビハール州など一部の州では禁酒法がありますが、カルナタカ州を含む多くの州では普通にお酒を購入・注文できます。
A. 収穫の際に土の中の虫や微生物を傷つけてしまう可能性があるためとされています。生き物を傷つけない「非暴力(アヒンサー)」の考え方が、野菜選びにも徹底されているのが特徴です。
A. 調べた範囲では、失礼にはあたらないという説明が多く見られました。むしろ勝手に決めつける方が、相手の信仰を軽んじることになりかねません。確認は気遣いとして受け止められているようです。


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